音が聞こえないとおびえた夜のことを
今でもよく覚えています。あれは、何だったのでしょうね、
あなたは、じっとしているようにと、ただ強く私を抱きしめて、
そうして、まるで何かから身を隠すように、
何かから、耐えるように、
じっと、そうしていましたね。あれは、何だったのでしょうね、
耳元で繰り返すあなたの、くちびるの動きだけが鮮明に、
思い出されるのです。
音などちっとも聞こえなかったけれど、
それがまるで呪文のように、私の中から離れない、
あれは、何だったのでしょうか。
私を縛るもの、
あなたの言葉あの日の記憶。