* CONCEPT *


冷たい心に 10

あたたかい掌と冷たいあなた
泣き喚いている僕をなおも傷つけるその行為を、君は優しさと云う
届け、届け、
触れれば壊れると知っていた
このままで、良いと、
月が微笑む、滑稽な僕らの末路を、
信じないよ、正直なあなた
手を伸ばして、唇に、心に、たとえこの腕に抱けなくても
いっそ蔑んでくれたら楽に忘れられるのに
優しさの欠片も見せないで、それでも愛されるその奇跡は、君の心の価値


上下左右前後 6

涙がこぼれそうだったので、上を向いていたのでしょう
くだらないひと言で君を不幸にする
あたたかい音が、左の、胸から、
あなたが右利きだったと、今頃気がつく
見えないものも多いので、前を向いていても、
振り向くな、後ろを向けば、過去と目が合うから


聖者の行進に寄せて 10

そうやって微笑んでいれば無傷でいられるとでも、
立ち止まることは許されない
白百合の花弁を数えてはむしる
すべてを愛しているふりをするのは楽だろう
悪を憎み罪を咎めるその権利は所詮僕にはなかったと云うのに、
この道は明日に続いている
未来永劫、どうか、君と君の愛するひとが幸せでありますよう
この掌に包めるほどの欠片が、いつかの月の欠片が、
過ちを悔いるなら、泣き真似などするな、
届かないひとへ、いつかこの道程で再び廻り会えますように


愛していると云えないひとへ 10

さっきまでここに、あなたがいたことを想う
名前を呼んでも良いですか、それすらも、問えず、
たとえ明日、私が死んでしまうとしても
きみのめがぼくをおっているというささやかなうぬぼれ
勘違いしないで、これは哀れみ
どうすればいいの、
大きく深呼吸。そして、君の名を囁く。
夢見ることが自由なら、
約束はしないよ、だって、この想いは期限付き
抱きしめてキスをして。ねえ、そうできたらどんなに幸せか、


可能性を信じない君に 10

全力という言葉を嫌う
手を伸ばしたら、思い切り引いてあげるのに
涙を隠す嘘なら許されると思っていたの、
スタートラインを踏み消したのは君自身
すべてを卑下するその根拠
認めなさい、負けたのは、誰
いつだってひとりで生きてきたわけじゃあないでしょう、
血の滲む努力という、陳腐な言葉に、
そんな眼で見ないで、
確証のない未来に何かを願うことは、そんなに格好の悪いことですか、


覚悟の台詞 10

「これで最後に」
「忘れろと云うんだね、」
「曖昧にするくらいなら、いっそ」
「もう顔も見たくない、声も聞きたくない、だから、」
「それが僕のすべてでした」
「愛されていない自信ならあったんだ」
「君が、この手をとってくれていたら、」
「やり直せるような、簡単な道程じゃなかったね」
「さようならと、云わせて、」
「泣かないで、一緒に行くから」


曇り空の下で 10

強がって笑った
鉛色の雲が流れて、流れて、
また明日会えたら
静かに深呼吸。静かに、耐える。
通り過ぎたのは気まぐれで
窓硝子に映るは透明な君
どうしてか、いろいろなことが嫌になる、今日という日
いい加減なことばかり並べられて、呆れて物も云えず
澱んだ空気のせいにして、
そんなに大切なら、掴んで放しちゃいけないと、


虹色の言葉 7

赤い眼を隠さずに、この悔しさが伝わるように、
橙のマフラーが似合わないあなた
黄色信号の明滅
緑の導線が切れているよ。だから、このスイッチは動かない。
青白い頬に手を添えても、
藍色の価値を問う
紫のペディキュア


幸せな日々を願う 10

我侭ですか、いつだってあなたの隣にいたいと願うのは、
駆け引きは下手だけれど、でも、
諦めないでついておいで
知っていたんだ、僕はあなたとはつり合わない
その眼に誰が映っていようとも、
幻じゃないよ、この刹那だけ、
額より、頬より、この唇に
どうしたら君に、この気持ちが真実だと伝わるだろう
何度も何度も、戯れに喧嘩をしたり、
あなたは許してくれるんでしょう、私がどんなにあなたを傷つけても


約束された別れの日まで 10

これからの3年、たとえ偽りでも君を愛す
悲劇とわかっていても永久(とわ)にと願う
優越感。劣等感。
見え透いた嘘と背徳の戯曲
信じていいですか、あなたを、信じたい、
いくらでも想像できる、最悪の結末
放っておいて、どうでもいいと思っているなら、優しくしないで
泣いて叫んで暴れて、ねえ、気づいて、
莫迦な僕のこの想いは、
このままあなたにころされたい


情けない僕と焦燥感 5

気づくには早すぎて、悔やむには遅すぎた。
だからどうしろと、云うの、
非力な私のこれが精一杯の抵抗
旅立ちの日は遠かりし
生きていけると叫ぶ。ひとりでも、大丈夫だと、


透明な愛情 10

空気よりも近く
どうか、微笑んでいて、
僕を傷つけまいとしたあなたのその行為
無口な君へ
ちゃんと伝わっているから
どうしたら君を不安がらせずにすむだろう
我侭で殺して
蜂蜜よりも、甘く、
見えないもの、だからこそ
あなたの髪を撫でるたびにあなたに恋をする


何でもない一週間 7

ブルーブルーマンデー
火曜キネマ
白々しい嘘と水曜日
木曜日までに答えを用意しておくように、
御供しましょう。今日は金曜日ですから。
何も変わらない土曜日
ビューティフルサンデー


終わらない夜に 5

月が見ているよ、どうか、泣かないで、
絡む視線を解くように愛す
すべてを賭けてきた、明日
数えた羊が逃げていく
夢の中でもきっと、君は正直で高潔なひとなんだろう


そうして僕はひとりになる 10

間違いじゃない。そうじゃないんだ、
どれだけの想いがあなたの中にあったとしても、
心を見せ合うことなどできない僕らは
所詮、わかり合う事など不可能で、
すれ違うのも当然で、
それでも理解して欲しいという我侭。
物質的な事柄しか信じない。ひとの心は浅はかだ。
約束なんてしたくない
遠くばかり見ているあなたはとても綺麗だけれど、
何処にも、行かないで、


いろはにほへと 7

今が大切なのでしょう、不確定な明日よりもずっと
蝋燭の灯を消してはならぬ、異形の輩に喰われるぞ、
始まりはどうでも良い会話から
似てもしないのに、指をさしてはしゃぐ君。
惚れた弱みと責任感
返事は返ってこないとわかっていた。
通り雨にぬれる。冷静に、なりたくて、


僕と兄との 10

背比べ
夕空とキャッチボール
御揃いの自転車で
いつも、そうやって、君ばかりが得をするんだよね。
大嫌いだと叫んで、泣いた、僕を抱きしめる、あたたかい腕
仲直りはどちらともなく、
あの頃に帰りたい、という、
スイカと花火と夏休み
ないしょばなし
いつか、大人になる僕たちは


怪しく揺れる灯に 10

確かに見たのだ、この眼で、確かに
夜な夜な聞こゆる
しゃりしゃりしゃりり
女々しいと云う
昼行灯が笑う
決して扉を開けてはならぬ、気配を殺して、動くでないよ
努々捕って喰われませぬな
泣く女の怨めし夜
百鬼夜行す
御覧、浮世の幻を。妖しきものの轟を、


すれ違うふたりの 10

顔色を伺うくせなんだ。嫌われたくはないからね。
ふとした科白に傷付いて、それでも平気なふりをする
君の視線のその先の
相手がいないと嘯いて、ねえ、その指輪は誰のため、
君の言葉を待つその一瞬。私の眼は迷子の幼子のよう。
かわいくない、なんて、冗談でも云わないで、もう諦めているけれど
マフラーを借りた。泣きたくなった。
なんだってできるよ、君が頼ってくれるなら、
最後まで君の御荷物でしかなく、君の期待に応えられず、ごめんとしか云えなかった
もっと早く気づいていたら、君との距離も変わっていたのかな、


君へ伝わることのない 10

時折見える君の優しさが私の心を壊すことを知っていますか、
荒れた掌が愛しかった
君の未来に私が居なくても、もう、それで構わないんだ
次に会った時が本当の別れだと、
この恋が実らずとも、せめて親愛の気持ちを、どうか、
何も云えなかった。何も、何も、
液晶画面に浮かぶのは、たった3文字の言葉
初めて会った日のことをたまに思い出して、間違いではなかったと、思う。
同じことを考えてきた私たちだからこそ、
君の恋を支え振り回され嫉妬して、でも、心から、おめでとう。


理由のない感情 10

どうして本当のことを云えなかったのか、
たとえばこの温い涙の理由
不甲斐なくてごめん。君を守れなくて、ごめん、
頬を掠めて過ぎていく若さというものを
どこから生まれてくるのだろうね、
憎悪に狂って逝けば良い
ピンクの木馬が欲しかった
アイスクリームを強請って泣いた
生まれ変われると云うのなら、空から落ちる滝になりたい
望んでもいないのに時に君をも傷つけるほどに


ありがとうとさようなら 10

高らかに叫ぶこともできる
何もなければ良かったと、嘆いた、夜も、
先の見えない日々に
手を取り合える仲間がいたから
この信念を貫いて、
生まれては死ぬ、星の数ほどの出会いと別れ
旅立つ彼らの後姿が、
私は涙を拭わない
馴れ合いのなかに平穏を渇望することなど
どうかあなたの未来に光が満ちていますように


子どもの背伸び 10

まだ薄ら寒い碧の頃
ただひとりの私になりたい。
溺れる子どもに手紙を送る
出鱈目なくせに深いんだよね、君って、
その他大勢の群集に生きる日々
この退屈で理不尽な世界で
私は私として成立できず沈むのみ
確実に次がある。そうして進んできたのだもの。
灰色で冷たい無機質な海
なかなか運命的な結末でしょう、


神さまの悪戯 10

愛故に盲目、故の絶望
甘い罪すら享受して
私は誰かと問う、
幸いなるは無知
失敗も快楽も、やがては過ぎていくものだから、
すべてにおいて真実である証
朽ちた枝に咲く花もあるように
曲がれども曲がれども
やみくもに走るだけが人生か、
求めれば与えられると言ったのは、誰、


心を覆う雲のような 10

不安がまるで零れたインクのようにまるで、
左回りの秒針
昨日の失敗が今日また起こらないと言い切れるか、否か、
すがる藁もないんだよ
いつか、必ずと、繰り返す
雨が降ってすべてが流れて空っぽな世界を見てみたい
それはあなた、雲を掴むような話ですよ、
明日は違う自分
ねえ、もういいかい、(まあだ、まあだだよ)
ひとり眠る静かな夜。蛇口の水、冷蔵庫の音、それから、


陽が落ちて始まる 10

何が悲しいのかわからないよ
あたりまえだったもの、そうだったもの
大丈夫と云って肩を抱いてふたり泣いた
置いてきぼりを喰らったって、
偶然に打ちのめされるほど繊細じゃないのさ
今日という寸劇
あの太陽に情などはないけれど
幸福な私を覚えていて
恨めしいのは誰よりも、疎ましいのは何よりも
繰り返す日々以上に残酷なことがありましょうか


泣き方を知らない君へ 10

微笑む君の幸せを疑いもしなかった
戦慄く唇から零れた想い
あんまり離れていたから、不安にさせたくなかったから、
あれほど止まらなかった涙も
きっと君は僕の腕を払って微笑むのだろう
ねえ、強さってそういうものじゃないでしょう、
渦を巻いては天へと昇る激情にのせて
だから笑わないで
赤い手袋。差し出された片方。君はいない。
神さまが泣き虫だから僕は泣かないことにした。