きまって夢に見る。
忘れもしない、君と別れた日のことを。
だめだ、と頭を振る。考えるのは止そう。思い出すのも、止そう。
寝返りをうつと、スプリングが苦しそうに軋む。
生きることだけを考えろと、彼は云った。
走れ、と、逃げて生きろと、彼は叫んだ。

生きているよ、ほら。呼吸も食事もしているし、君を夢に見ることも、あるんだよ。
でも僕は、ちゃんと生きられているのかな。

湿った土の匂いがして、ああ、雨が降ってきた、とぼんやりと考える。
パタパタと、屋根をうつ雨粒の音に、眼を閉じた。

すべてが流れてしまえばいいのに。
過去も、今も、未来も、在るだけなら要らない。
望んだものの一切を奪っていくこの世界など、要りはしない。
こうして穏やかに眠れる日が、あと幾ら残っているのだろうかと胸があわ立つような不安を覚えたけれど、このまま死ぬのも悪くないんじゃないかと、敢えて眼を開けることもせず、わざと呼吸を止めたりもしてみるものの1分ももたない不甲斐なさに、ひとり泣いた。








未来を征く君